早朝の紀州東照宮〜徳川家康公と初代藩主・頼宣(よりのぶ)公の遺徳を偲ぶ〜

2023年7月中旬のある朝、紀州東照宮を訪ねました。

自宅から歩いて20分、到着したのは8時過ぎでした。

私の家があるのは和歌山市の西浜という地区で、県立和歌山工業高校のグラウンド側に広がる住宅地です。和歌山工業高校の辺りには、かつて『西浜御殿』という第10代藩主治宝(はるとみ)公の別邸(1818年に完成)が建っていました。

19歳で藩主となった治宝公は、文化を愛したお洒落な感覚の持ち主。絵をたくさん描きましたが茶道にも熱心で、47歳の時に完成した西浜御殿は、焼き物(お庭焼き)を制作する場所になっていたそう。

一方、藩の財政状況は慢性的に思わしくなかったところへ、日照り続きで作物が育たず、遂に百姓一揆が起こり、治宝公はその責任をとって54歳で藩主の座を引退しました。

引退後は西浜御殿に居住し、その後28年6ヶ月にわたって実権を握り続け、町の学問と文化の発展に貢献しました。

功績としてよく語られている、藩主の悲願を達成する形での天守閣の白壁への施工は、27歳の頃のこと。約50年後、天守閣が落雷で焼失した時にはその再建に尽力し、79歳の頃、ほぼ元のまま復元された天守閣の姿をしっかりと見届け、82歳で天国へ旅立ちました。治宝公は、歴代のお殿様の中でも大きな存在感を示しています。

こうした個性豊かなお殿様の足跡を知り、また、その歴史が現在の私の自宅の周囲で繰り広げられていたのかと思うと、東照宮へ向かって歩きながらそよそよと吹いてくる風を感じるだけで、何だか楽しくなってくるのです。

紀州東照宮は、1619年に紀州入りした初代藩主で家康公の十男、頼宣(よりのぶ)公がその2年後の1621年に父の家康公(1543〜1616年)をまつるために創建しました。現在は、家康公と頼宣公の二つの柱をご祭神としています。

パンフレットにはご祭神の解説として、

家康公については「江戸幕府初代将軍以降、270年に及ぶ戦乱のない世の礎を築かれました」

頼宣公については「吉宗公など将軍を輩出した御三家の紀州藩の礎を築かれました」

と、その功績がとても分かりやすく記されています。

本殿の中は写真撮影は禁止です。

栃木県にあり、日本屈指の歴史的観光スポットの日光東照宮(家康公の墓所で世界遺産にも登録され、数々の国宝や重要文化財が集結。境内には数多くの彫刻作品や華やかな色彩の装飾が多く見られる)に対し、こちらは、

関西日光!!

その名前にふさわしく、社殿は、左甚五郎という当時、大きな勢力を持っていた彫刻を請け負う職人集団(ブランドのような)の作による彫刻や、狩野・土佐両派の絵画で装飾されており、桃山時代の極彩色に輝く豪華な風姿を示しています。

拝観料は300円ですが500円納めると、巫女さんが本殿の案内をしてくれます。

この日、到着した早朝8時過ぎの境内には参拝者も少なくて、木々は繁っているため陰が多くて涼しいのは有り難いのですが、薄暗い雰囲気に少し心細さもありました。しかも看板によると拝観は9時からで、まだずいぶん待たなければ・・

ただ一人、石畳の参道を掃除している人がいたのでホッとして声をかけると、

「8時過ぎから上の本殿にも人が来てますよ」とのこと。

それを励みに、参道の先に進みました。

駐車場に止めた場合、駐車券を持参すると1名は拝観料が無料になるそうです。

 

門が開くまで本殿を背に座り、和歌浦湾の景色を眺めていました。

8時半ごろ、遂にギイっと扉が・・

振り返ると、開けてくれたのは何と可愛らしい巫女さん!とっても嬉しくなり500円を納めて案内をお願いしたところ、声も明るくハキハキとされていて彫刻や絵画のことがとても良く理解できました。

参拝の仕方についても親切に記されています。

こちらは、人の煩悩と同じ数の108段あり、頼宣公が指揮をとって家臣が石を積みあげた侍坂(さむらいざか)。

この坂を登ると一段ごとに煩悩が落ちていき、清々しい心でお参りをすることができます。

頼宣公は、江戸幕府8代将軍で名君と名高い吉宗の祖父にあたり、吉宗自身が頼宣公を憧れの存在として慕うほど、優れた政治家だったそう。

景観を大切にした城下町の整備を始め、藩内の治安維持も強化しましたが、頼宣公の政策の中で紀州藩で最も長く浸透していったのが、1660年に発表した触れ書き「父母状」。

これは、頼宣公が儒学者・李梅渓(りばいけい)に命じて作成されたもので、親孝行や法律を守ることの大切さが説かれています。幕末に至るまで、この父母状が紀州藩の教育理念でした。

頼宣公は、48年の治世で紀州繁栄の基礎を作り、1671年に70歳で亡くなりました。

 

家康公は、遺言で次のような言葉を私たちに贈ってくれています。

「人の一生は重荷を負うて遠き道をゆくがごとし。急ぐべからず。不自由を常と思えば不足なし。心に望み起こらば、困窮したる時を思い出すべし。堪忍は無事長久の基、怒りは敵と思え。勝つことばかり知りて、負くること知らざれば害その身にいたる。おのれを責めて人をせむるな。及ばざるは過ぎたるよりまされり」

筆舌に尽くし難い苦難を乗り越え、戦国乱世に終止符を打って江戸幕府を開いた家康公。天下人になってからも、麦飯と味噌汁のみの質素な食事をして、趣味の鷹狩で運動不足の解消に努めていたのが功を奏したのか、平均寿命が40歳前後という時代にあって75歳まで生きられました。

紀州東照宮の本殿には、鷹狩り好きの家康公にちなんだ彫刻が見られます。

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